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7月7日

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マリオ・ブルネロの無伴奏チェロコンサートに行ってきました。

NHKのクラシック倶楽部で初めて知り、彼独特の音楽に対するアプローチ(なぜか山に登って自然の中でチェロを弾くに興味をそそられ、

バッハの無伴奏チェロ組曲のCDを入手して聴き、その独特の味わいの音楽に惚れてファンになりました。

今年の来日では協奏曲のプログラムが多かったのですが、バッハの無伴奏を演奏してくれるプログラムがあったので

行ってきました。 素晴らしかったです。チェロという楽器の可能性を、あそこまで音楽的に表現できるチェリストは稀だろうと思いました。

一つ一つの音に豊かなふくらみを与えるような弓の動きや弦のおさえ方だけでも様々な工夫を凝らして音楽を奏でてくれました。

演奏の素晴らしさと、質の良い音楽の楽しみ方を味わえた、ここ数年聴いてきた中でも最高レベルのコンサートだったと思います。

 

バッハの無伴奏第一番J・ウィアという現代の作曲家の作品カサドの無伴奏チェロ組曲、最後にバッハの無伴奏第6番というプログラムで、

ウィアの曲は初聴きでしたが、ブルネロの音楽性によって、(という言葉でまとめてしまっていいのか悩みますが、音の魅力を言葉に置き換えるのが

難しく・・。)楽しんで聴けました。まるでヴァイオリンのような音を出したり、打楽器と化したり。それらが、奇をてらったものではなく、

いわゆるチェロの音色と見事なバランスで音楽を形成しているのでした。ブルネロの口笛も美しい響きでしたねぇ。 

カサドの曲はウィア同様知らない、と思っていたら、所有する林裕さんのCDで聴いていた曲でした。

この曲でもチェロの響きの豊かさと美しさに圧倒されました。ここで前半終了、会場はすでに拍手喝采の嵐。

 

後半はバッハの無伴奏第6番でしたが、前半が聴きどころ満載だったためか、バッハを弾くブルネロがなんだか窮屈そうに思えました。

今まで私は現代音楽がサッパリわからず、(ぺルトとライヒくらいしか聴かず)なぜ、もっと和声とか調和を大事にしないのか、と思ってきましたが、

ブルネロの演奏を聴いていて、彼ほどの表現力のある人間にとっては、きちっと決まったテンポや和声をあまりに正しく守ることを強いられる

音楽だけを演奏しなければならないとすれば、それは演奏家にとってかなりの苦痛を伴うものなのかもしれない、ということを少し感じました。

もちろん、バッハを含めバロック音楽は演奏家の即興性が生かされてよい音楽で、ブルネロはその独特のアプローチでバッハを演奏して

くれたのですが、それでも守らなければならないことは数多いようで・・・。 今後も、バッハだけの演奏会は行われないような気がしました。

 

しかし、加藤知子さんのヴァイオリン・コンサートの時もそうでしたが、超一流の演奏家のコンサートでは“楽器が嬉しそうに鳴っている”と感じます。